契約の成立
2021年7月28日
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕
※本文中で引用,参照する会計基準書等の条項は,末尾の凡例に表示の略語で記載しています。
Step1「顧客との契約を識別する」の概要
企業は,最初のステップで,顧客との契約を識別します。このステップは,次のとおり細分されます。
1 契約の成立
まず,企業は,顧客との間で契約が成立したかどうかを判定します。
本基準の適用対象となる契約の5つの要件(第19項)のうち(1)は,法律上,企業と顧客との間に契約が成立したことを意味しており,その判定は,現実に我が国で運用されている具体的な民事訴訟制度を前提とする法律上の判断になります。
2 契約の識別
次に,企業は,顧客との間で成立した契約が本基準の適用対象となる要件を満たすかどうかを判定します。
本基準の適用対象となる契約の5つの要件(第19項)のうち上記1のサブ・ステップで判定した(1)を除く(2)~(5)が収益認識という会計の目的からの要求事項であり,本基準を適用する契約の範囲を限定しています。
3 契約の結合
企業は,同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含みます。)と同時に又はほぼ同時に締結した複数の契約に一定の関係がある場合には,契約を結合して単一の契約とみなして処理します(第27項)。
4 契約の変更
企業は,契約の当事者が契約の範囲又は価格(あるいはその両方)を変更する場合には,本基準に従い,契約変更の要件・類型を判定し,企業が識別していた既存の契約の変更を処理します(第28項~第31項)。
Step1-① 契約の成立
Step1「顧客との契約を識別する」では,まず,企業は,顧客との間で契約が成立したかどうかを判定します。
本基準の適用対象となる契約の5つの要件(第19項)のうち(1)「当事者が,書面,口頭,取引慣行等により契約を承認し,それぞれの義務の履行を約束していること」は,法律上,企業と顧客との間に契約が成立したことを意味しています。
契約が成立したか否か(契約における権利・義務に法的な強制力があるかどうか)の判定は,現実に我が国で運用されている具体的な民事訴訟制度を前提とする法律上の判断です。企業は,契約が成立したか否かの判定にあたって,我が国の民事訴訟を担当する裁判官の判断を合理的に予測する必要があります。
契約の概念
l 本基準の“契約”と法律制度における“契約”
本基準は,契約を「法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決め」と定義づけます(第5項)。
契約における権利・義務の強制力は法的な概念に基づくものであり(第20項),法的な強制力のないもの(道義的,社会的な約束など)は契約に含まれません(IFRS/BC 31)。IFRS第15号も,契約における権利・義務に法的な強制力があるかどうかは,当事者の権利・義務を保護するために存在する法律上の枠組み(訴訟制度)又は同等の枠組み(仲裁制度等)の中で検討すべき問題であり,法的な強制力があるかどうかを決定する要因は法域間で異なると指摘しています(IFRS/BC 32)。我が国には私法関係を律する民事訴訟制度があり,一方の当事者が契約を遵守せず,義務を履行しなければ,他方の当事者が訴訟に訴えて強制的に契約に定める権利を実現する手段を保障しています。
したがって,本基準にいう“契約”は法律制度における“契約”と同一の概念であり,契約が成立したかどうかは,現実に我が国で運用されている具体的な民事訴訟制度を前提とする法律上の判断です。
l 契約の概念
契約の成立によって,その当事者はその契約内容に従うよう拘束されることになります。このような契約の拘束力の背景には「約束は守らなければならない」という社会道徳があり,契約の根幹には社会道徳における「約束」に類似した事象があります。人が他人との間で約束を交わしたときは,その他人がその約束を信頼することになるので,人が自らの意思で他人と約束をした以上,その約束に従うように拘束すべきであると考えます。この考え方の根源には「人は自らの意思のみに拘束される」という法思想(私的自治の原則)が存在します。
このような契約の根幹にある「約束」に類似した事象は,法律制度上,各当事者の「意思表示」が合致している状態として「合意」と呼びます。「合意」は,社会道徳における「約束」に類似していますが,すべての「約束」が「合意」であるとは限りません。法律制度は,契約の当事者に対し,訴訟に訴えて強制的に契約に定めた権利を実現する手段を保障しますが,そのためには,契約の成立の基礎となる「合意」が法律制度によって強制するのに適した一定の条件を備えていなければなりません。例えば,当事者どうしの内心にとどまり,客観的に了知することができない約束や,どのような内容の履行(給付)を強制すればよいのか特定,確定できない約束,当事者が法律によって拘束されることを意図していない約束は,訴訟制度によって履行を強制することになじみません。
そこで,法律制度は,各当事者が拘束されるべき自らの意思を,一定の要件の下に「意思表示」と定義づけ,各当事者の「意思表示」がそれぞれ成立し,それが合致することを「合意」と呼んで区別し,社会にみられる多種多様な約束の中から,法的な強制力を付与するにふさわしい条件を備えた「合意」だけを「契約」として取り扱います。
本基準の“契約”の定義の中の「取決め」は「合意」を指しており,法的な強制力を伴います。他方,本基準は,法的な強制力を伴わないものも含める場合には「約束」という用語を使い,「契約」という用語と使い分けています。
l 契約の成立の判定手順
顧客との契約の締結に関する慣行及び手続は,国,業種又は企業により異なり,同一の企業内でも,例えば,顧客の属性や約束した財又はサービスの性質により異なる場合があるので,これらを考慮して,①契約の成立・不成立(顧客との合意が強制力のある権利・義務を生じさせるのかどうか)及び②契約の成立時期(いつ強制力のある権利・義務を生じさせるのか)を判断します(第20項)。
本基準は会計基準であり,契約の成立の判定方法を定めておらず,法律上の判断に委ねられています。法律制度では,まず,①各当事者の意思表示が成立したかどうか及びその内容を確定し(意思表示の成立),次に,②これら当事者相互の意思表示が合致したかどうか(及びその内容が確定する可能性があるかどうか)を判定します(契約の成立)。
意思表示の概念
l 意思表示の概念
意思表示とは,一定の法律効果の発生を欲する意思を表示する行為をいいます。意思表示は,一定の法律効果の発生を欲する意思(効果意思)が存在しなければなりませんが,それだけでは他人が客観的に了知することができないので,その意思の存在を他人に対して推測させるに足るだけの何らかの外形(文書,口頭,態度など)を伴う行為(表示行為)が必要になります。
人は,個人として社会生活を営む上でも,また,法人の一担当者として経済活動を行う上でも,何らかの意思の存在を推測させるに足るだけの外形を表すことがありますが,それらのすべてが意思表示ではありません。意思表示は,一定の法律効果の発生を欲する効果意思が存在しなければなりません。「一定の法律効果」は,①「一定の」ものとしてその内容が特定,確定できなければならず(特定性・確定可能性),かつ,②道義的,社会的なものではなく,「法律」上の効果の発生を欲するものでなければなりません(法的拘束の意図)。
例えば,一方の法人(顧客)の一担当者が,商談中に,他方の法人(企業)の担当者に対して,口頭で「後日注文書を発行するから,至急この作業に取り掛かって欲しい。」と発言したとしても,この発言だけでは未だ意思表示は成立しません。両担当者間では,後日注文書を発行することを予定しており,一担当者の発言は,その所属する法人(顧客)が未だ法的に拘束されないことを伝えています。また,このような発言だけでは,注文の内容や代金の額が未だ特定,確定できない場合が少なくありません。
l 意思表示の主体(代表権・代理権)
法人である企業や顧客の意思表示は,基本的に法人の代表者・支配人又はこれらの者から代理権を授与された者(使用人を含む。)により行われる必要があります。
Ø 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は,当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限(包括代理権)を有し,これに制限を加えたとしても,善意の第三者に対抗することができません(会社法14条)。
Ø 物品の販売等(販売,賃貸その他これらに類する行為)を目的とする店舗の使用人は,その店舗にある物品の販売等をする権限を有するものとみなされます(会社法15条)。
l 申込と承諾
申込とは,それを受け入れる相手方の意思表示(承諾)があれば契約を成立させる意思表示をいい,承諾とは,申込を受け入れて契約を成立させる意思表示をいいます。
申込は,相手方が受け入れたときに,直ちに契約の内容が特定,確定し,その内容に法的に拘束されることを意図するので,多くの場合,契約条件が詳細に記載された「申込書」などの書面を伴います。契約の成立に向かう意思が表れたとしても,成立すべき契約の内容に未確定の部分があり,又は相手方が契約の条件を修正(交渉)することを予定している場合は,申込には該当せず,単にその準備的な誘引行為として取り扱われます。
l 契約の成立
契約は,対立する当事者間で意思表示の本質的部分が合致することによって成立します。各当事者の意思表示の一部に意味内容の不確定な部分があったとしても,当事者相互の意思表示の本質的な部分が合致していれば,契約が成立します。
例えば,売買契約では,売主が一定の目的物を一定の代金額で売り渡す意思を表示し,買主が,一定の目的物を一定の代金額で買い受ける意思を表示したときに,互いに表示した目的物と代金額が合致していれば,意思表示の本質的部分が合致し,契約が成立します。目的物の性状・品質,代金額の確定方法などの細目的な部分やその他の取引条件に不確定な部分があったとしても,法律上は,契約が成立したものとして取り扱います。
意思表示の解釈(契約の解釈)
l 意思表示の解釈(契約の解釈)
人の意思は,必ずしも完全・明瞭に外部に表現されるわけではありません。意思表示の成立とその内容を確定するためには,当事者が外部に表した何らかの外形から,当事者が意図した法律効果の内容を特定,確定し,当事者が法的に拘束されることを意図していたかどうかを判定する必要があります。これを意思表示の解釈といいます。当事者相互の意思表示の解釈によって契約の内容を確定することを契約の解釈と呼びます。
l 意思表示の解釈(契約の解釈)の準則
意思表示の解釈(契約の解釈)については,考慮すべき要素や方法に関して多くの事例から帰納的に醸成されてきた以下のような準則(ルール)が一般に承認されています。
a 事情
意思表示の解釈にあたっては,表示行為の前後にわたって生じた一切の事情を考慮します。表示行為の前やその時の事実や状況だけではなく,表示行為の後に生じた事実や状況は,表示行為の時の当事者の意思を推測させるものに限り考慮します。IFRS第15号も,企業が「当事者が契約の条件に拘束される意図があるかどうかを評価する際に,すべての関連性のある事実及び状況を考慮すべきである」と述べています(IFRS/BC 35)。
Ø 契約の存在形式(口頭・文書)が契約の成立・不成立を決定づけるものではありませんが(IFRS/BC 35),証拠として残らない口頭の表示は,当事者が法的に拘束されることまで意図していないために契約が成立しないことが多く,通常は,取引証憑として法的に拘束されることを意図する文書を取り交わすことによって契約が成立します。
Ø 法人である企業や顧客が法的に拘束されることを意図するためには,法人の代表者・支配人又はこれらの者から代理権を授与された者(使用人を含む。)の意思表示が必要になるので,基本的に法人の一担当者の行為だけでは意思表示が成立せず,法人内の「承認」(稟議・決裁)を経て表示行為を行う必要があります。
Ø 文書による意思表示がある場合は,当該文書の内容以外の事情を考慮することは限定的となります。一般に文書を作成する者は証拠として残ることを認識しながら表現するので,その記載内容自体が作成者の意思を正確に表していることが多いからです。
Ø 言語としての明示の表示行為がない場合にも,挙措動作・態度など人の意思を推測させるだけの外形によって黙示の意思表示が成立する場合があります。契約の申込に対して,これを承諾する黙示の意思表示を認められれば,契約が成立します(意思実現)。
b 取引上の慣習
意思表示の解釈にあたって,取引上の慣習を考慮します(民法92条)。
Ø 取引上の慣習が意思表示の成立を認めない方向に働く場合があります。正式な契約書を作成することが取引上の慣習となっている取引分野では,多くの場合,契約書が作成されるまでは当事者が法的に拘束されることを意図しないので,契約が成立しません。IFRS第15号も,「契約の当事者が契約を承認していると判断するために文書での契約が必要とされる場合もある」と述べています(IFRS/BC 35)。
例えば,不動産の売買取引では,正式な売買契約書を作成することが取引上の慣習となっています。その取引の過程で,交渉を円滑に進める目的で買付証明書と売渡承諾書が取り交わされたとしても,特別な事情がない限り,正式な売買契約書が作成されるまで契約は成立しません。
Ø 取引上の慣習が意思表示の成立を認める方向に働く場合があります。IFRS第15号も,「口頭の契約又は含意(商慣行に従って)された契約の当事者が,それぞれの履行義務を果たすことに同意していることがある」と述べています(IFRS/BC 35)。
c 任意規定
任意規定とは,公の秩序に関する規定(強行規定)でない規定をいいます。当事者が任意規定と異なる合意(「特約」と呼ばれます。)をしない限り,意思表示の解釈にあたって,任意規定を適用します。
Ø 契約の内容に関する民法・商法等の法典中の各規定の多くは,任意規定です。
Ø 契約の成立に関する民法・商法等の法典中の各規定も任意規定であり,私的自治の前提に抵触しない限り,特約によって排除又は修正することができます。当事者間で民法・商法等の規定と異なる方法で契約が成立することを合意すれば(例えば,継続的取引基本契約の中の個別契約の成立に関する定め),その合意は,その当事者間でその後に契約を締結する場合に効力を生じます。これに対し,相手方の一定の行為(作為・不作為)があれば,契約が成立したものとみなす旨の一方的な通知は,私的自治の前提に抵触し,効力が生じません。
d 条理(信義誠実の原則)
純粋に当事者の意思を探求しても具体的に妥当な結論が得られないときに,条理や信義誠実の原則(信義則)を考慮して規範的な解釈を行うことがあります。例えば,著しく不公平な契約条項は例文としてその文理どおりの拘束力を否定する解釈手法(いわゆる例文解釈)があります。
取引証憑
当事者間で契約書,合意書,覚書など合意の成立を示す文書が作成されていれば契約の成立を認めることは容易ですが,取引によっては,以下のような見積書,注文書,納品書,請求書などの証憑しか存在しないケースもあるので,これら取引証憑について,契約の成立の判定に与える影響を検討する必要があります。
a 見積書
見積書は,顧客の意思決定のため前もって対価を提案する企業の一方的な通知文書です。企業から見積書を送付しただけでは,顧客から何らかの表示行為がない限り,契約が成立することはありません。
商取引上,企業は,発行した見積書に対して(見積書に記載した有効期限内でも),顧客の受け入れにより直ちに法的に拘束されることを意図しておらず,別途に契約の締結を予定しているのが通常であり,一般に見積書の発行が申込に該当することはありません。
見積書に対価が明示されるだけでなく,財又はサービスの内容や取引条件が十分に特定されているなど取引の実情によっては,企業は,発行した見積書に対して顧客が注文書を発行すれば契約を成立させる意思の場合もあり,そのような見積書は申込に該当します。この場合,顧客が注文書を発行しなくとも,購入する意思を推測させるだけの外形を伴う行為(黙示の意思表示)を企業が了知したときは,契約が成立する場合もあります(意思実現)。
b 交渉文書
Ø 買付証明書・売渡承諾書
不動産の取引の過程で取り交わされる買付証明書(買受申込書)は,一般に交渉を円滑に進める目的で作成され,これを受け入れる相手方の一方的な意思表示(売渡承諾書)だけで直ちに契約を成立させる意思ではありませんので,申込に該当しません。不動産の売買取引では,正式な売買契約書を作成することが取引上の慣習となっており,通常は買付証明書と売渡承諾書の取り交わしで契約が成立することはなく,正式な売買契約書の作成によって契約が成立します。
Ø 法的拘束力のない交渉文書
企業間の事業提携(共同開発),企業買収(M&A)などの契約でみられるように,後に正式な契約書の作成(調印)を予定している当事者間で,契約の締結に向けて交渉を円滑に進める目的で意向書,基本合意書,覚書等が取り交わされたとしても,特別の事情がない限り,当事者は法的に拘束されることを意図していませんので,契約が成立することはありません。
c 注文書・注文請書
注文書は,最終的な契約条件を示し,これに対する承諾があれば直ちに契約を成立させる顧客(買主)の意思を明示した文書であり,申込に該当します。注文請書は,注文書に対してこれを受け入れて直ちに契約を成立させる企業(売主)の意思を明示した文書であり,承諾に該当します。商取引上,注文書・注文請書を取り交わした時点で契約が成立します。
注文書は申込に該当するので,注文請書がなくとも,注文書を受領した企業にこれを受け入れる意思を推測させるだけの外形を顧客が了知すれば契約が成立する場合もあります。
注文書(申込)に記載した有効期限は承諾の期間の定めであり,その期間内は撤回が許されず,注文請書(承諾)により契約が成立しますが(民法523条1項),承諾がないままその期間が経過すればその効力を失います(民法523条2項)。
注文請書に示された契約条件の一部が,注文書に示された契約条件と合致せず,その不一致が契約の成否に関わるほど重要であれば,注文請書は,修正付き承諾として新たな申込とみなされます(民法528条)。注文書と注文請書に示された契約条件の不一致が重要でない場合は,一致する部分によって契約が成立し,一致しない部分は更に当事者の協議によって決定することになります。
d 納品書・受領書
納品書や受領書は,一定の商品・製品を納品した事実や受領した事実を伝達する一方的な通知文書です。
納品書以外に取引証憑が存在しない場合であっても,納品に先立って,顧客から企業に納品を求める依頼があるのが通常であり,その依頼が申込に該当するか(企業の受け入れによって直ちに法的に拘束されることを意図しているか)を判定し,その依頼が申込に該当すれば企業が納品した時点で契約が成立します(意思実現)。また,顧客が代金(単価・数量)を明示した受領書を企業に交付したり,納品された商品・製品を消費したり転売したりしたときは,その時点で契約が成立する場合もあります。
e 請求書
請求書は,企業(売主)から顧客(買主)に代金の支払を求める意思を明示した文書です。請求書自体は顧客の意思を推測させるものではありませんが,顧客が代金の全部又は一部を支払うなど代金債務を承認する行為によって契約が成立する場合があります。
継続的取引の特則と基本契約
l 商法の特則
企業は,平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込を受けたときは,遅滞なく,契約の申込に対する諾否の通知を発しなければなりません(商法509条1項)。企業がこれを怠ったときは,契約の申込を承諾したものとみなされます(同条2項)。
商法509条は,私的自治の原則を修正し,申込に対する承諾の意思表示がなくとも契約が成立することを定めますが,任意規定であり,特約によって排除又は修正することができます。
l 継続的取引基本契約
当事者間で一定の取引の反復を予定する場合,個々の取引に共通して適用される基本的事項を定める契約(継続的取引基本契約)を締結し,その契約の中で個々の取引に関する契約(個別契約)の成立に関する事項を定めることが少なくありません。例えば,商法509条の趣旨に従い,「遅滞なく」の日数を明確化したり,申込(注文)の存在形式(書面,FAX,メール等)を簡略化したり,申込を行う代理権を有する者の範囲(事業部・事業部門に属する従業員等)を定めたりします。
このサブ・ステップにおいては,申込を受領する企業にとって契約の成立を簡便に立証できるかどうかを検討する必要があります。顧客の注文(申込)が法人の代表者の記名押印のある書面によらない実情にある場合には,例えば,顧客の特定の部署に属する従業員による一定の証票(FAX・メールなど)で注文することを定めたり,顧客から電話で注文を受ける実情にあるときは,電話を聴取した企業の担当者から顧客に受注確認書を発信し,一定の期間内に撤回の意思表示がなければ契約が成立すると定めたりすることも考えられます。
【凡例】 第〇項 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
IFRS/BC IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(結論の根拠)