同族会社・非上場企業の株式譲渡について
【はじめに】
当事務所は、同族会社を中心とする中小企業(非公開会社)に関する株式譲渡や譲渡価格をめぐる手続や紛争についても多くの依頼を受けております。
非公開会社の株式は、取引相場がなく、直ちに譲渡することができないため、M&Aや事業承継を含め正常な取引として株式譲渡を行う場合であっても、譲渡承認手続や適正な株価に関し、法律・会計・税務の専門家の支援が求められます。とくに中小企業の株価は、会社の利益や純資産、保有資産、業種、市場環境など複数の要素を反映して評価されるため、「自社株はいくらなのか」を正確に理解することが重要です。 また、経営権(支配権)を掌握しない非公開株式を保有することは、十分な配当もなく、相続税等のコストばかり負担することにもなりかねないため、同族会社など中小企業では、経営権の掌握をめぐる株主・役員間の紛争(内紛)が生じ、その解決の一環として株式譲渡(自己株式の取得)が行われる場合もあり、法律の専門家の支援が必要になります。
当事務所では、M&A・事業承継だけでなく、株主・役員間の紛争に伴う株式譲渡の手続のほか、株式価格決定申立て、会計帳簿閲覧謄写請求、商事仮処分などの手続も支援し、中小企業の経営権や株式価格をめぐる取引・紛争も多く取り扱っています。株価算定を行う目的は、単なる売却価格の決定だけではなく、企業価値を適切に算出し、親族間や株主間のトラブルを防止する点にもあります。
【第1回】
今回は、非公開会社・同族会社の意義について解説します。
1 非公開会社の意義
非公開会社とは、公開会社ではない会社のことです。
公開会社とは、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社のことです(会社法2条5号)。
株式は自由に他人に譲渡できるのが原則とされています(会社法127条)。もっとも、中小企業の閉鎖性維持の要請に応じるため、昭和41年の商法改正により、例外として、定款に定めを設けることで承認機関(取締役会など)の承認を得ない限り株式を譲渡できないようにすることができることとされました。このような定款による株式の譲渡制限を設けている会社が非公開会社となります。そして、そのような制限を受けている株式を譲渡制限株式といいます(会社法2条17号)。なお、特例有限会社は、常に非公開会社になります(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律9条)。
他方、このような定款の定めを設けていない会社が公開会社であり、公開会社の多くは上場会社になります。上場会社とは、その発行する株式等の有価証券が金融商品取引所に上場している会社を指し、公開会社と同義ではありません。非上場会社の中にも、とくに昭和41年商法改正前に設立された会社は、稀に公開会社である場合もあります。上場会社では市場価格を参考に株価を比較できますが、非公開会社では市場価格が存在しないため、会社ごとに企業価値を個別に評価する必要があります。
株式の譲渡制限に関する定めは、登記事項であり(会社法911条3項7号)、会社の登記情報を取得することにより確認することができます。また、株主は、会社に対し、いつでも定款の謄本を請求することができます(会社法31条2項2号)。実際の株価算定では、純資産額や将来利益をどのように反映させるかによって結果が大きく変わるため、早い段階から専門家へ問い合わせを行うことが重要です。
2 同族会社の意義
同族会社とは、会社…の株主等…の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資…の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社のことです(法人税法2条10号)。
平易に言うと、株主と特殊な関係のある個人(株主の配偶者や六親等以内の血族、三親等以内の姻族、株主から受ける金銭等により生計を立てている者など)や法人(株主及び特殊な関係のある個人・法人で支配している法人)を1つの株主グループとして見たときに、3つ以下の株主グループで議決権の50%超を保有している会社が同族会社になります。
同族会社の株式については、同族株主がいるかどうか、中心的な同族株主がいるかどうかで税務上の株価の評価方式が異なります。非公開会社の株式譲渡を検討する場合には、自己が保有する株式だけでなく、会社の株主構成を調査し、同族会社や同族株主、中心的な同族株主を把握する必要があります。株価の計算方法には、純資産方式や類似業種比準方式など複数の方法があり、会社の業種や規模によって適切な算出方法を検討する必要があります。
株式会社は、株主名簿を作成しなければなりませんが(会社法121条)、中小企業の中には株主名簿を作成していない会社も少なくありません。他方、株式会社は、法人税の確定申告にあたって、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を作成しており、非公開会社は全株主を網羅して表示している場合が少なくありません。
株主は、会社の役員等でなくとも、一定の要件を満たすときは株主名簿を閲覧謄写することができ(会社法125条2項)、また、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を入手することができる場合もあるので、当事務所にご相談ください。初回のご相談では無料で状況整理を行っているケースもあり、事業承継や株式売却に不安を抱える方から多くの問い合わせをいただいております。
次回は、自己保有株式の数、譲渡制限株式の移転について解説します。
【Q&A】
1 保有している株式に譲渡制限が付されているかどうかは、どのように確認すればよいですか?
基本的に公開会社のほとんどは上場会社であり、非上場会社が発行する株式には、通常、譲渡制限が付されており、非上場会社のほとんどが非公開会社になります。ただし、昭和41年の商法改正により定款に譲渡制限の定めを設けることができるようになったため、とくに昭和41年商法改正前に設立された会社は、譲渡制限を設ける定款変更をしておらず、稀に公開会社である場合もあります。
株式の譲渡制限に関する定めは、登記事項であり(会社法911条3項7号)、会社の登記情報を取得することにより確認することができます。また、株主は、会社に対し、いつでも定款の謄本を請求することもできます(会社法31条2項2号)。株式売却を検討している場合には、譲渡制限の有無だけでなく、現在の企業価値評価や純資産額についても参考資料を整理しておくことが重要です。
2 同族株主や中心的な同族株主に当たるかどうかを把握するため、会社に株主名簿を開示するよう求めたのですが、教えてくれません。どのように確認すればよいですか?
株式会社は、株主名簿を作成しなければなりませんが(会社法121条)、中小企業の中には株主名簿を作成していない会社も少なくないので、株主名簿の開示を求めても、これに応じてくれないこともあります。
他方、株式会社は、法人税の確定申告にあたって、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を作成しているので、その開示を求めることが考えられます。とくに非公開会社は、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」に全株主を網羅して表示している場合も多く、株主名簿に代替するものといえます。
会社が任意に開示に応じてくれない場合には、株主として株主名簿の閲覧謄写請求権、会計帳簿閲覧謄写請求権を行使することが考えられます。いずれも一定の要件を満たす必要があり、裁判外でこれらの請求権を行使しても会社が開示に応じない場合には、訴訟の提起、仮処分の申立てをすることになります。どのように要件を充足するかは専門的な知見が必要になるので、当事務所にご相談ください。株主構成を正確に理解することは、株価の評価や将来的な株式譲渡の検討を行ううえでも非常に重要です。
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