同族会社・非上場企業の株式譲渡について②
今回は、自己保有株式の数、譲渡制限株式の移転について解説します。
1 自己保有株式の数
中小企業の場合、株主が自己の保有する株式の数を正確に把握していない場合もあり、自己保有株式の数を調査しなければならないケースも少なくありません。このような事態が生じる原因は、会社経営者が法律に詳しくないため、かねてから法律が求める株式譲渡(自己株式取得)の手続等を履践しなかった結果、株主の知らない間に株式を移転したり、自己株式として取得したりした体裁を整えたからです。
このようなケースでは、まず、株主は、過去の期間にわたって株主名簿や別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を入手し、株主が納得できる株主構成である過去の時点から時系列に整理して会社経営者が主張する株主構成とその変遷を調査します。また、商業登記規則の改正が施行された平成28年10月1日以降に登記事項に係る株主総会決議があったときは、法務局で、登記申請書の添付書類であるいわゆる株主リストを閲覧することにより会社経営者が主張する株主構成の変遷との整合性を検証することができます。会社経営者が主張する株式譲渡や自己株式取得は、法律が定める手続を履践していないために効力が生じない場合もあります。たとえば、株式譲渡に際して、株券発行会社であるのに株券を交付していない場合や、非公開会社であるのに譲渡承認手続を履践していない場合、自己株式を取得したのに株主との合意による取得手続を履践していない場合には、株式移転は無効になります。
こうしたケースでは、まず、法律上、有効な自己保有株式の数を調査する必要があるため、当事務所にご相談ください。株式数の把握は、最終的な企業価値や株価の評価結果にも大きく影響するため、正確な資料収集と比較検討が必要になります。
2 譲渡制限株式の移転
譲渡制限株式の移転については、まず、①特定承継か包括(一般)承継か、②株券発行会社かどうかに留意します。
⑴ 特定承継か包括承継か
譲渡制限株式の移転については、特定承継か包括承継かによって、株式会社の承認を要するかどうかが異なります。
特定承継とは、特定の財産や権利を個別に承継する形態をいい、当事者の法律行為(意思表示)によって移転の効果を生じさせる“譲渡”が含まれます。他方、包括承継とは、権利義務を一括で承継する形態をいい、自然人における相続や法人における合併・会社分割などが該当します。
株式の譲渡制限は、あくまで“譲渡”を制限する定款の定めであり、株式譲受人は、会社の承認を受けた後でなければ、会社に株主名簿の名義書換を請求することができません(会社法134条1号、2号)。
他方、包括承継については会社の承認は必要とされておらず、相続により株式を取得した株主は、会社の承認を得ることなく、直ちに会社に株主名簿の名義書換を請求することができます(会社法134条4号)。
当事務所では、株式譲渡だけでなく、相続や事業承継も多く取り扱っており、「株式の価値はいくらか」という点が争点となることも多く、譲渡の目的や対象株式の内容、対象会社の株主構成などを整理したうえで株価を算出します。
⑵ 株券発行会社かどうか
譲渡制限株式の移転については、株券発行会社かどうかによって、株式譲渡の方法と会社に対する株主名簿の名義書換請求の方法が異なります。
株券発行会社とは、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定め(会社法214条)がある株式会社をいいます(同法117条7項)。会社法が施行された平成18年5月1日以降、株式会社は、原則として株券不発行会社であり、例外として定款に定めたときにだけ株券発行会社になり、その定款の定めは登記事項とされています(同法911条3項10号)。
会社法施行時に存在していた既存の株式会社は、株券を発行しない旨の登記がある場合を除き、株券発行会社であるとみなされ、その旨が職権で登記されました(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律・旧76条4項)。中小企業の中には、会社法施行後に株券を発行する旨の定款の定めを廃止する手続(会社法218条)を履践しておらず、依然として株券発行会社である会社も少なくありません。
このように株券発行会社かどうかは、株券発行会社であるとみなされる場合があるので、会社の定款ではなく、会社の登記情報を取得することにより確認します。
株券発行会社の株式の譲渡は、その株式に係る株券を交付しなければその効力を生じません(会社法128条1項)。そのため、株券を所持する者は、法律上、有効に株式を取得したと推定され、株券発行会社の譲渡制限株式の譲受人は、会社の承認を得た後であれば、譲渡人と共同でなくとも、会社に株券を提示して単独で株主名簿の名義書換を請求することができます(会社法施行規則22条2項1号)。
これに対し、株券不発行会社では、意思表示(譲渡契約)だけで株式を移転することができます。株券不発行会社の譲渡制限株式の譲受人は、会社の承認を得た上で、原則として、株主名簿に記載・記録された株主(譲渡人)と共同して会社に株主名簿の名義書換を請求しなければなりません(会社法133条2項)。
なお、実務上は株価評価を無料で実施しているわけではなく、調査対象となる資料や企業規模によって費用や期間が大きく異なります。適切な算定を行うためには、専門家への早期の相談が重要です。
次回は、譲渡等承認請求の手続について解説します。
【Q&A】
1 非公開会社の株式を保有しており、その株式数を会社に聞いたのですが、従前より減少しており、正確な数が分かりません。どのように調査すればよいですか?
中小企業では、現在の株主名簿は経営者の主張であって、必ずしも、法律上、有効な株式構成を示しているとは限りません。
まず、過去の期間にわたって、発行会社から株主名簿や別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を入手します。登記事項を精査し、商業登記規則の改正が施行された平成28年10月1日以降に登記事項に係る株主総会決議があったことが判明したときは、法務局で、登記申請書の添付書類であるいわゆる株主リストの写真を撮影することもできます。
そうした調査から、過去の一時点における株主構成を正として、その時点から時系列に整理して会社経営者が主張する株主構成とその変遷を分析し、株式移転が無効でないかとうかを調査します。たとえば、株式譲渡に際して、株券発行会社であるのに株券を交付していない場合や、非公開会社であるのに譲渡承認手続を履践していない場合、自己株式を取得したのに株主との合意による取得手続を履践していない場合には、株式移転は無効になります。
こうしたケースでは、法律上、有効な自己保有株式の数を調査する必要があるため、当事務所にご相談ください。株式数の誤認は、最終的な企業価値や株価の評価結果、売却価格の算出にも直結するため、早期対応が望まれます。
2 株券を持っていないのですが、株式を譲渡することができますか?
株券発行会社の株式の譲渡は、その株式に係る株券を交付しなければその効力を生じないので(会社法128条1項)、対象会社が株券発行会社かどうかは、必ず確認しなければなりません。
株券発行会社とは、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定め(会社法214条)がある株式会社をいい(同法117条7項)、会社の定款ではなく、会社の登記情報を取得することにより確認します。会社法が施行された平成18年5月1日以降、株式会社は、原則として株券不発行会社であり、株券発行会社である場合には株券を発行する旨の定款の定めが登記されています(同法911条3項10号)。とくに会社法施行時に存在していた既存の株式会社は、株券発行会社であるとみなされ、その旨が職権で登記されましたが(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律・旧76条4項)、その後に株券を発行する旨の定款の定めを廃止する手続(会社法218条)を履践していない場合があるので、注意が必要です。
対象会社が株券発行会社であるのに株券を持っていない場合には、①株券を発行する手続、または②株券を発行する旨の定款の定めを廃止する手続(会社法218条)を履践しなければ、株式を譲渡することができません。
対象会社の株式譲渡を検討する場合、当事務所に企業価値や株価につきご相談いただければ、株券を持っていない場合の対処も併せて行います。
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