連載「新しい収益認識基準で変わる契約実務」(公開草案版)

 

財又はサービスに対する保証

 

2018年2月20日 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 12ページ

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「財又はサービスに対する保証」 目次と概要

 

1.適用指針「財又はサービスに対する保証」の概要

 

企業が財又はサービスの販売に関連して,(契約,法律又は企業の取引慣行に従って)当該財又はサービスに対する保証も提供することは一般的に行われています。

企業は,Step2「契約における履行義務を識別する」で,契約における取引開始日に,まず,契約における約束を識別しますが,このような財又はサービスの販売について,①財又はサービスの引渡し義務を識別するほか,②当該財又はサービスを保証するという企業の約束を識別することができます。

次に,企業は,本基準第31項(2)の要件について,これら①と②の契約における約束が別個のものかどうかを判定します。

財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証のみを顧客に提供するときは(アシュアランス型),契約の観点において,①財又はサービスの引渡し義務と②当該財又はサービスを保証するという契約における約束が別個でないので,財又はサービスの引渡し義務として束ねて一つの履行義務を識別します。

これに対し,財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて顧客にサービスを提供するときは(サービス型),契約の観点において,①財又はサービスの引渡し義務と②当該財又はサービスを保証するという契約における約束が別個なので,財又はサービスの引渡し義務と保証サービスに区切って二つの履行義務を識別します。

適用指針「財又はサービスに対する保証」(指針34~38)は,財又はサービスに対する保証が財又はサービスの引渡し義務と別個かどうかの判定の指針と,別個でない場合(アシュアランス型)と別個のサービスとして履行義務を識別する場合(サービス型)のそれぞれの会計処理を定めています。

 

☞企業が財又はサービスの販売に関連して当該財又はサービスの保証も提供する場合,Step2「契約における履行義務を識別する」で,当該財又はサービスを保証するという契約における約束が,契約の観点から,財又はサービスの引渡し義務と別個かどうかを判定し,別個でない場合(アシュアランス型)は,財又はサービスの引渡し義務として束ねて一つの履行義務を識別し,別個である場合(サービス型)は,財又はサービスの引渡し義務と保証サービスに区切って二つの履行義務を識別します。

 

2.財又はサービスの引渡しに関する企業の約束

 

● 財又はサービスの引渡し義務(給付義務)の内容

財又はサービスの販売に関しては,契約の目的とされた財又はサービスを提供する強制力のある義務(契約における本来の債務=給付義務)として,財又はサービスの引渡し義務が識別されます。企業の履行により提供する財又はサービスは,当然ながら顧客との契約において合意された条件(数量・品質・性能・仕様等)に従っていなければならず,その条件に従っていない場合には,企業の履行は完了しません。

法律上,債務の履行は,債務の本旨(=契約により定まる債務の内容)に従ったものでなければならないとされています(民法415条)。企業の履行の内容(債務の本旨)の概要は,契約で定められますが,細目まで網羅的に明示されないため,明示されない部分は契約の解釈により定まります。一般的に,契約書では品種・品番・数量等を特定するに止め,詳細な品質・性能・仕様等は,契約書の別紙や別の書類(仕様書,パンフレット等)により示される場合が少なくありません。

 

● 不完全な履行に関する法律上の取扱い

法律上,企業が顧客との契約において合意された条件(数量・品質・性能・仕様等)に従っていない財又はサービスを顧客に提供しても,債務の本旨に従わない不完全な履行であり,債務の履行が完了しません(債務が消滅しません)。

企業は,合意された条件に従っていない財又はサービスを提供したときは,民法の任意規定に従い,目的物の修補,代替物・不足分の引渡しにより履行を追完する責任を負います(民法562条)。また,顧客は,企業に対し,相当の期間を定めて履行の追完を催告し,その期間内に履行の追完がないときは,代金の減額を請求することができます(民法563条)。なお,顧客は,一般原則に従い,債務不履行を理由に損害の賠償(民法415条),契約の解除(民法541,542条)をすることもできます(民法564条)。

他方,これらの企業の責任には期間制限があり,顧客は,目的物が契約に適合しないことを知ってから1年以内に企業に通知しない限り,履行の追完,代金の減額,損害の賠償を請求し,又は契約を解除することができません(民法566条)。

もっとも,このような期間制限では,企業は,責任追及される可能性を抱えたまま長期間不安定な立場に立たされてしまいます。そこで,商法は,商取引の迅速性に配慮し,商人間の売買については,顧客は,受領した目的物を遅滞なく検査する義務を負い(商法526条1項),検査後直ちに企業に通知しなければ,目的物が契約に適合しないことを理由に企業の責任を追及できないこととしています。また,検査によって直ちに発見することができない契約不適合(隠れた瑕疵)であっても,受領後6か月以内に企業に通知しなければ,同様に責任追及ができないこととしています(商法526条2項)。

 

● 契約における約束の識別

企業が不完全な履行に関する責任(担保責任)を負わない特約(民法572条)がない限り,企業が負う履行追完責任その他財又はサービスに対する保証に関する義務も,契約における約束(企業が負担し又は拘束を受ける強制可能な義務)として識別し,財又はサービスの引渡し義務と別個のサービスかどうかを判定します。

企業が負う財又はサービスに対する保証に関する義務が民法・商法の任意規定と同じか,又は軽減されている場合は,財又はサービスの引渡し義務の一部であり,別個ではありません。他方,企業が負う財又はサービスに対する保証に関する義務が民法・商法の任意規定より加重されている場合は,財又はサービスの引渡し義務を超えた別個のものかどうかを判定する必要があります。

 

☞企業は,契約において合意された条件(数量・品質・性能・仕様等)に従っていない財又はサービスを顧客に提供しても,債務の本旨に従わない不完全な履行であり,特約がない限り,履行の追完(目的物の修補,代替物・不足分の引渡し),代金の減額,損害の賠償の責任を負います。企業は,顧客との契約の中の不完全な履行に関する条項などから,履行追完責任その他財又はサービスに対する保証に関する義務を契約における約束として識別し,財又はサービスの引渡し義務と別個のサービスかどうかを判定します。

 

3.財又はサービスに対する保証に関する企業の約束の性質

 

● 財又はサービスに対する保証の性質

財又はサービスに対する保証の中には,①財又はサービスの引渡し時に存在する瑕疵から顧客を保護するものもあれば,②財又はサービスの引渡し後に生じる故障や不具合から顧客を保護するものもあります。財又はサービスに対する保証が引渡し時に存在した瑕疵から顧客を保護するだけの場合(①のみの場合)は,顧客は,財又はサービスの引渡しと独立したサービスを受けません。そのような瑕疵を修補するための事後の修理又は交換は,企業の過去の履行(財又はサービスの販売)の追加的コストとみるべきですので(IFRS/BC 369),一部の保証については,財又はサービスの引渡し義務に加えて独立の履行義務を識別すべきではありません。

 

● “事象”と“原因”の区別

上記①の保証は,財又はサービスの引渡し時に瑕疵が発見される場合にだけ顧客を保護するものではありません。顧客が使用を開始した後に発生した故障・不具合によって引渡し時に瑕疵があったのではないかという疑いが生じることもあります。調査の結果,引渡し時に瑕疵があったことが特定(立証)された場合にだけ顧客を保護する場合は,顧客は,財又はサービスの引渡しと独立したサービスを受けていません。そのため,①の保証の範囲は,故障や不具合などの“事象”がいつ発生するのかで限定されるのではなく,故障や不具合が(引渡し時において)財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていなかったことに起因しているかどうかという“原因”で限定されます。

したがって,財又はサービスの引渡し義務に加えて独立の履行義務を識別するかどうかは,契約において合意された仕様に従っているという保証(①)だけを提供しているのか,それに加えて顧客にサービス(②)も提供しているのかどうかによって判定します(IFRS/BC 370)。顧客による使用開始後,一定の期間内に発生した故障・不具合であれば,その“原因”が特定(立証)されなくとも,無償の修補,代替品の引渡しを約束する場合は,独立の履行義務を識別します。

 

● 不完全な履行に関する法律上の取扱いと財又はサービスに対する保証

故障や不具合の“原因”が(引渡し時において)財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていなかったことにある場合とは,企業が顧客との契約において合意された条件(数量・品質・性能・仕様等)に従っていない財又はサービスを顧客に提供した場合,すなわち債務の本旨に従わない不完全な履行をしたケースにほかなりません。

したがって,契約において合意された仕様に従っているという保証だけを提供している場合とは,顧客との契約において,不完全な履行に関する企業の責任だけが定められており,企業の責任の範囲(保証の履行の要件と内容)が財又はサービスの引渡し義務を経済的に補償するに止まる場合であるといえます。

このような場合,当該財又はサービスを保証するという企業の約束は,契約の観点において,財又はサービスの引渡し義務という他の約束と区分して識別できませんので,本基準第31項(2)の要件を充足せず,別個のサービスでないと判定し,財又はサービスの引渡し義務として束ねて一つの履行義務を識別します。

財又はサービスに対する保証の区別は,以下のとおり,法律上,財又はサービスの引渡し義務の不完全な履行に対する企業の責任の範囲に止まるのか,それを超えるのかの区別と整合しています。

 

財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証だけを顧客に提供する(アシュアランス型)

企業が,顧客との契約において,引渡し時に財又はサービスが合意された仕様に従っていなかった場合にのみ,顧客に補償することを約束する保証をアシュアランス型と呼んでいます(IFRS/B 28)。

法律上,顧客との契約において,企業が提供した財又はサービスが契約において合意された条件(数量・品質・性能・仕様等)に従っていなかった場合(不完全な履行)にのみ,顧客に対し,履行の追完(目的物の修補,代替品・不足分の引渡し),代金の減額,損害の賠償その他の補償をする義務を負う場合をいいます。

 

財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて顧客にサービスを提供する(サービス型)

企業が,顧客との契約において,引渡し時に財又はサービスが合意された仕様に従っていたとしても,当該財又はサービスに関する追加的な便益(例えば,一定の期間内は正常に使用できるよう維持すること)を提供するか,又は財又はサービスの引渡し義務の補償を超える便益を提供することを約束する保証をサービス型と呼んでいます(IFRS/B 28)。

法律上,顧客との契約において,①企業が顧客に保証を履行する義務を負う要件の範囲が(引渡し時に)財又はサービスが契約において合意された条件に従っていなかった場合(不完全な履行)よりも広いか,又は②企業が顧客に履行する保証の内容が財又はサービスの引渡し義務を補償する範囲(履行の追完,代金の減額又は損害の賠償)を超えている場合をいいます。

 

● メーカー保証書

企業(メーカー)は,消費者(顧客から企業の製品を購入する他の当事者)のため,販売する製品に企業が発行した保証書を付することが一般的に行われています。このようなメーカー保証書により企業(メーカー)が第三者(消費者)に製品保証を約束することは,顧客(販売店)に対する製品の引渡し義務の一部ではなく,明らかにそれを超える便益を提供していますので,サービス型の保証です。

 

☞企業は,契約における約束として識別した財又はサービスに対する保証に関する義務が,契約の観点において,財又はサービスの引渡し義務という他の約束と区分して識別できるかどうか(本基準第31項(2))を判定します。故障や不具合の“事象”がいつ発生したかではなく,その“原因”が(引渡し時において)財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていなかったこと(不完全な履行)にあるかどうかで区別し,保証の履行の要件と内容が,①不完全な履行に対して財又はサービスの引渡し義務を補償するに止まる場合は,別個のサービスではなく,財又はサービスの引渡し義務として束ねて一つの履行義務を識別し(アシュアランス型),②財又はサービスの引渡し義務の範囲を超える場合は,別個のサービスとして,財又はサービスの引渡し義務と保証サービスに区切って二つの履行義務を識別します(サービス型)。

 

4.合意された仕様に従っているという保証(アシュアランス型)

 

● 定義

企業が財又はサービスを顧客に提供するにあたって,企業が当該財又はサービスに対する保証も提供する場合のうち,財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていることのみを保証するものをいいます(指針34,122)。

財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていることのみを保証するとは,以下の要件をいずれも満たす場合をいいます。

a 企業が顧客に保証を履行する義務を負う場合(要件)は,(引渡し時に)財又はサービスが契約において合意された条件に従っていなかった場合(不完全な履行)に限定されていること

顧客が使用を開始した後に故障・不具合などの事象が発生するときは,その原因を特定することが難しいことも多いため,企業は,契約又は企業の取引慣行に従って,一定の期間内に発生した故障・不具合であれば,その原因が特定(立証)されなくとも,無償で修補,代替品の引渡しを行うことを約束する場合があります。このように,企業が財又はサービスの引渡し義務を完全に履行していた(可能性がある)としても,それを補償することを約束する保証は,サービス型であり,アシュアランス型ではありません。

b 企業が顧客に履行する保証の内容(効果)は,財又はサービスの引渡し義務を経済的に補償する範囲(履行の追完(※),代金の減額又は損害の賠償)に限定されていること

 ※履行の追完は,目的物の修補,代替品又は不足分の引渡しを指します。

企業が,顧客が財又はサービスを正常に使用するため,財又はサービスの引渡し義務を経済的に補償する範囲を超えて,メンテナンス(保守・点検・維持)などの便益を提供することを約束する保証は,サービス型であり,アシュアランス型ではありません。

以上のa及びbの要件をいずれも満たす場合は,財又はサービスの引渡し義務の一部であり,契約の観点において,財又はサービスの引渡し義務という他の約束と区分して識別できず,本基準第31項(2)の要件を充足しません。そこで,このような保証は,別個のサービスではないと判定し,財又はサービスの引渡し義務として束ねて一つの履行義務を識別します。

 

● 会計処理

企業は,財又はサービスに対する保証を企業会計原則注解(注18)に定める引当金として処理しなければなりません(指針34)。

企業は,財又はサービスを顧客に移転した時に,保証の履行に必要な費用とそれに関する負債(製品保証引当金)を認識し,その測定にあたっては,コストを基礎に測定します。サービス型の保証の処理とは対照的に,アシュアランス型の保証に取引価格(利益を含む収益)を帰属させません(IFRS/BC 376)。

 

☞企業が顧客に保証を履行する義務を負う場合(要件)が,財又はサービスが契約において合意された条件に従っていなかった場合(不完全な履行)に限定され,かつ,保証の内容(効果)が,財又はサービスの引渡し義務を経済的に補償する範囲(履行の追完,代金の減額又は損害の賠償)に限定されている場合は,財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていることのみを保証するアシュアランス型です。アシュアランス型は,企業会計原則注解(注18)に定める引当金として処理し,企業は,財又はサービスを顧客に移転した時に,保証の履行に必要な費用とそれに関する負債(製品保証引当金)を認識し,その測定にあたっては,コストを基礎に測定します。

 

5.顧客にサービスを提供する保証(サービス型)

 

● 定義

企業が財又はサービスを顧客に提供するにあたって,企業が当該製品に対する保証も提供する場合にその保証の全部又は一部が,製品が契約において合意された仕様に従っているという保証に加えて顧客にサービスを提供するものをいいます(指針35,122)。

財又はサービスに対する保証のうち,財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていることのみを保証するという要件を満たさないものは,すべてサービス型となります。

 

● 財又はサービスに対する保証を独立して購入するオプション

例えば,財又はサービスに対する保証が個別に価格設定される又は交渉されることにより,顧客が財又はサービスに対する保証を単独で購入するオプションを有している場合には,当該保証は,別個のサービスであることが明らかであり,サービス型の保証となります(指針38)。企業は,財又はサービスの引渡しに加えて,保証サービスを顧客に提供することを独立して約束しているからです(指針123,IFRS/BC 371)。

 

● アシュアランス型とサービス型の区別の指標

本基準は,アシュアランス型とサービス型の区別の指標を例示しています(指針37)。企業は,これらの指標を考慮し,アシュアランス型の要件を満たさないものは,すべてサービス型と判定します。

a 財又はサービスに対する保証が法律で要求されているかどうか

一般に,法律は,(引渡し時において)瑕疵のある財又はサービスを購入するリスクから顧客を保護することを目的としており,法律で要求されている財又はサービスに対する保証は,アシュアランス型であることが多いといえます。

b 財又はサービスに対する保証の対象となる期間の長さ

一般に,財又はサービスの引渡し時に瑕疵があったかどうかは,時の経過により立証が難しくなるため,保証の対象となる期間が長いほど,その立証を不要とする趣旨,すなわちサービス型であることが多いといえます。

c 企業が履行を約束している作業の内容

アシュアランス型は,企業が顧客に履行する保証の内容が,財又はサービスの引渡し義務を経済的に補償する範囲(履行の追完,代金の減額又は損害の賠償)に限定されますので,これを超える作業を約束している場合はサービス型となります。もっとも,瑕疵のある商品又は製品に係る返品の配送サービス等を約束していても,財又はサービスの引渡し義務を経済的に補償するための付随的な作業であり,サービス型の指標にはなりません。

 

● 会計処理

企業は,財又はサービスに対する保証を別個のサービス(保証サービス)として履行義務を識別し,財又はサービスの引渡しと保証サービスのそれぞれの履行義務に取引価格を配分します(指針35)。

企業がアシュアランス型とサービス型の両方の保証を約束している場合にそれぞれを区分して合理的に処理できないときには,企業は,両方を一括して単一の履行義務として処理します(指針36,IFRS/BC 376)。

 

☞アシュアランス型の要件を満たさない保証はサービス型の保証です。サービス型の保証は,別個のサービス(保証サービス)として履行義務を識別し,財又はサービスの引渡しと保証サービスのそれぞれの履行義務に取引価格を配分します。

 

6.製造物責任

 

● 製造物責任

製造物の製造,加工又は輸入を事業とする企業が,その引き渡した製造物が通常有すべき安全性を欠くこと(=「欠陥」)により人の生命,身体又は財産を侵害したときは,これによって生じた損害を賠償する責任を負います(製造物責任法3条)。

製造物責任法が定める「欠陥」は,製造物が通常有すべき安全性を欠くことをいい,契約において合意された品質・性能・仕様等を満たさないばかりでなく,他人の生命,身体,財産を侵害してはならないという一般的な社会生活関係における不可侵義務にも違反するようなものをいいます。

 

● 会計処理

企業は,法律に基づいて第三者に損害賠償責任(不法行為責任)を負い,顧客との契約において,顧客が支払を約束した対価と“交換”(=同価値性)に,第三者に損害を賠償し,又は第三者に損害を賠償した顧客に補償するという契約上の義務を負うわけではありません。したがって,製造物責任は,取引価格を配分すべき履行義務ではありません(指針124)。

もし,企業が財又はサービスに「欠陥」があると見込まれる状況に至ったときは,企業会計原則注解(注18)に従って引当金の計上の要否を判断します(指針124)。

 

☞製造物責任は,顧客との契約において,顧客が支払を約束した対価と交換に負う契約上の義務ではありませんので,企業は製造物責任を履行義務として識別しません。

投稿者: 片山法律会計事務所