相互に特別な資本関係がある会社間の「公正な価格」
2017年2月11日号(「公正な価格」を考える35号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕
相互に特別な資本関係がある会社間の「公正な価格」
前掲平成28年7月1日付け最高裁決定により,売り手又は買い手の多数株主と少数株主との間に利益相反関係が存在する場合にも,「一般に公正と認められる手続」を踏んでいるときは,原則として,実際に合意された組織再編対価(比率)を「公正な価格」とみるという判例が確立したものと考えられます。この最高裁決定は,完全子会社化を目的に行う公開買付け及び全部取得条項付種類株式の取得のケースにおいて,「一般に公正と認められる手続」かどうかについて,①独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられること,②公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されていることなどの要素を考慮するという事例判断を示しています。
上記最高裁決定は,「相互に特別な資本関係がある会社間において」(売り手と買い手の間に実質的な支配従属関係がある場合)も,「一般に公正と認められる手続」を踏んでいるときは,原則として,実際に合意された組織再編対価(比率)を「公正な価格」とみる可能性があることを示唆していると考えられます。その場合に「一般に公正と認められる手続」かどうかについては,上記最高裁決定が示した①の要素(独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられること)が参考になるものと考えられます。(上記最高裁決定が示した②は,完全子会社化を目的に行う公開買付け及び全部取得条項付種類株式の取得のケースに特有の要素です。)
今後,「相互に特別な資本関係がある会社間」における「一般に公正と認められる手続」についての最高裁判例の動向が注目されます。
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