第4回

 今回は、譲渡等承認請求の記載事項、方法(実務)、効果および株式買取請求の撤回の制限について解説します。

1 譲渡等承認請求の記載事項

(1) 譲渡人が請求する場合(会社法136条)

 譲渡人である株主が譲渡等承認請求を行う場合には、以下の①~④の事項を記載する必要があります(会社法138条1号)。 

 ① 譲受人が譲渡制限株式を取得することを承認するか否かの決定をすることを請求すること

 ② 譲渡制限株式の数(種類発行会社の場合は種類と種類ごとの数)

 ③ 譲受人の氏名または名称

 ④ 不承認の場合に株式の買取りを請求する場合には、その旨

 不承認の場合に株式買取請求をするかどうかは、譲渡等承認請求者が任意に選択することができます。株式買取請求をする場合には、譲渡等承認請求(①)と同時に行う必要があり、譲渡等承認請求にその旨(④)を記載しなければなりません。この場合、譲渡制限株式は、発行会社または発行会社が指定した買取人が買い取ることになりますが、譲渡等承認請求者が買い取る者を指定することはできません。

 譲渡人が譲受人との間で譲渡代金を合意していたとしても、不承認の場合には、あらためて発行会社または指定買取人との間で売買価格(譲渡代金)を協議しなければならず、協議が調わないときは、裁判所に売買価格決定の申立てをすることになります。協議や裁判の結果、売買価格は、譲渡人との間で合意していた譲渡代金よりも高額になる場合もあれば、低額になる場合もあります。

 また、譲渡人(個人)が譲受人に譲渡する場合には、譲渡所得に対して20%(所得税15%、住民税5%、ほかに復興特別所得税あり)の申告分離課税で済みますが、発行会社に譲渡する場合には、自己株式の取得に当たり、みなし配当課税が適用されるため、配当所得に対して最大で55%(所得税45%、住民税10%、ほかに復興特別所得税あり)の総合課税(累進課税)になります。みなし配当は、“譲渡代金の額-対象株式に対応する資本金等の額”を配当とみなす制度であり、とくに留保利益(利益剰余金)が潤沢にある発行会社はみなし配当が多額になるため、株式買取請求をした場合に発行会社が買取人を指定せずに自己株式の取得を行うリスクに注意する必要があります。ただし、発行会社が自己株式を取得する場合には分配可能額規制(会社法461条1項1号)を受けるため、あらかじめ発行会社が買い取るかどうかや、その限度を予測することができます。

 このように、不承認の場合に株式の買取りを請求するかどうかは、発行会社または指定買取人との間で決定される売買価格を予測するほか、発行会社が買い取る可能性、その場合に株式買取請求を撤回する機会があるかどうか、発行会社が買い取る場合(自己株式の取得)の税負担の増加などを検討しておく必要があり、これらの検討は専門的な知見が必要になるため、当事務所に早めにご相談ください。

(2) 取得者が請求する場合(会社法137条1項)

 株式取得者が譲渡等承認請求を行う場合にも、上記⑴と同様に、以下の①~④の事項を記載する必要があります(会社法138条2号)。

 ① 取得者が譲渡制限株式を取得したことを承認するか否かの決定をすることを請求すること

 ② 譲渡制限株式の数(種類発行会社の場合は種類と種類ごとの数)

 ③ 取得者の氏名または名称

 ④ 不承認の場合に株式の買取りを請求する場合には、その旨

2 譲渡等承認請求の方法(実務)

 譲渡等承認請求の方式について、法令による制限はなく、口頭・書面・電磁的方法(電子メール等)のいずれの方式でもできます。

しかし、譲渡等承認請求は、法律行為(意思表示)であり、売買価格決定申立事件(非訟事件)や後日の紛争に備えて、その内容と到達の事実を立証する必要があるため、実務では、一般に配達証明付き内容証明郵便によって行います。

譲渡制限株式は、発行会社の承認手続を経ない限り、発行会社との関係で株式移転の効力が生じません。後日、株式移転の効力が争われる場合があり、発行会社の承認手続を立証するためには、発行会社から受領した承認決定通知書(会社法139条2項)を保存しておく必要があります。それがない場合(発行会社が承認手続を行わなかった場合も含まれます。)には、上記1⑴または⑵の①~③の記載事項を内容とする意思表示が到達した事実・時期を立証し、後述する“みなし承認”の法律効果が発生したことを明らかにする必要が生じます。

逆に、不承認の場合に株式の買取りを請求するためには、上記1⑴または⑵の①~③のほかに④も記載されている意思表示が到達した事実を立証する必要が生じます。

このような立証のためには、配達証明付き内容証明郵便が最も適切な証明手段になります。意思表示の受領権限のある代表者(代表取締役)を宛先にした内容証明郵便が発行会社の本店所在地に配達された事実を立証すれば、証明された内容の意思表示が発行会社に到達したことになります。これに対し、口頭による譲渡等承認請求は、その内容や代表者に到達した事実の立証自体が困難です。また、電磁的方法による譲渡等承認請求も、代表者の支配管理領域に到達した事実(たとえば、メールを受信した事実)を立証することが容易でない場合があります。

 このように、譲渡等承認請求は、実務上、配達証明付き内容証明郵便を利用します。

3 譲渡等承認請求の効果(1号みなし承認)

 譲渡等承認請求が発行会社に到達したときは、発行会社は、その日から2週間(定款で短縮することができます。)以内に、譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定内容を通知しなければなりません(会社法139条2項)。通知書を郵送する場合には、2週間以内に譲渡等承認請求者の住所地に配達される必要があります。

この通知は、発行会社の承認機関において譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定がされたことを前提としており、承認機関の決定がないのに、代表取締役が承認するか否かを通知しても通知の効力は認められません。

発行会社が譲渡等承認請求の日から2週間以内に譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定内容を譲渡等承認請求者に通知しなかったときは、譲渡制限株式の取得を承認したものとみなされます(会社法145条1号、1号みなし承認)。ただし、譲渡等承認請求者と発行会社との間の合意によって別段の定めをしたときは、この取扱いを受けません。

 なお、発行会社の代表取締役が、この通知を怠ったとき、または不正の通知をしたときは、過料の制裁を受ける場合があります(会社法976条2号)。

4 譲渡等承認請求の撤回の制限

 譲渡等承認請求者が譲渡等承認請求に伴う株式買取請求をした後、発行会社から株式を買い取る旨の通知(会社法141条1項)を受け、または指定買取人から株式を買い取る旨の通知(同法142条1項)を受けるまでは、株式買取請求を撤回することができますが、これらの通知を受けた後は、発行会社または指定買取人の承諾を得ない限り、株式買取請求を撤回することはできません(同法143条)。

 株式買取請求をした譲渡等承認請求者は,基本的に、これらの通知を受けるまで、譲渡制限株式を買い取る者が発行会社か第三者(指定買取人)かを知ることができないことに留意するべきです。定款に別段の定めがない限り、株主総会が譲渡制限株式を買い取る者を決議しますが(会社法140条2項、5項)、譲渡等承認請求者は、当該決議について議決権を行使することができないため(同条3項)、株主総会招集通知も受けません(同法299条1項、298条2項括弧書き)。もっとも、他の株主等から株主総会の決議結果を直ちに知ることができれば、発行会社または指定買取人から買い取る旨の通知が届く前までに、株式買取請求を撤回する機会があることになります。

【Q&A】

1 非公開会社が発行する譲渡制限株式を買い取ってもらいたいのですが、発行会社に株式の買取りを請求できますか?

 非公開会社の株主が、発行会社に対し、一方的にその保有する譲渡制限株式の買取りを請求することができる場合は限定されており、一定の要件を満たす必要があります。

 その一つは、株主が、第三者(譲受人)に譲渡制限株式を譲り渡そうとするときに、発行会社に対し、譲受人による譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定をすることを請求し(譲渡等承認請求)、不承認のときは株式の買取りを請求することを明らかにすることによって、その後、発行会社が譲受人による譲渡制限株式の取得を承認しない旨の決定をしたときに、株主が株式買取請求をしたことになります。

 この株式買取請求は、発行会社が買い取る場合と、発行会社から指定された第三者(指定買取人)が買い取る場合があります。第三者が買い取る場合には、株主(個人)は、譲渡所得に対して20%(所得税15%、住民税5%、ほかに復興特別所得税あり)の申告分離課税で済みますが、発行会社が買い取る場合には、自己株式の取得に当たり、みなし配当課税が適用されるため、配当所得に対して最大で55%(所得税45%、住民税10%、ほかに復興特別所得税あり)の総合課税(累進課税)をされる場合があります。とくに留保利益(利益剰余金)が潤沢にある発行会社はみなし配当が多額になる場合があります。

 株主は、譲渡等承認請求に伴う株式買取請求をするときに、買取人を指定することができないため、発行会社が買取人を指定せずに自己株式の取得を行うリスクに注意する必要があります。

2 非公開会社が発行する譲渡制限株式を第三者(譲受人)に譲渡するため、発行会社に対し、譲受人による譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定をすることを請求しましたが(譲渡等承認請求)、発行会社からいっこうに連絡がありません。株式譲渡を実行してもよいでしょうか?

 譲渡制限株式の移転は、発行会社の承認手続を経ていない場合、当事者間では効力が生じますが、発行会社との関係においては効力を生じません。そのため、譲渡等承認請求をした株主は、発行会社が承認するか否かを決定するまで、株式譲渡を実行することができず、不安定な状態に置かれます。

 そこで、会社法は、発行会社が譲渡等承認請求の日から2週間以内に譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定内容を譲渡等承認請求者に通知しなかったときは、譲渡制限株式の取得を承認したものとみなすこととしています(同法145条1号)。

 2週間は、譲渡等承認請求が到達した日の翌日(零時)から起算し(初日不算入の原則、民法140条)、週をもって期間を定めるため、暦に従って到達した日の翌日(曜日)の翌々週の応当日(同一の曜日)の前日(24時)、言い換えれば、到達した日(曜日)の翌々週の応当日(同一の曜日)に満了します(同法143条)。

 例えば、6月2日に発行会社の本店所在地に配達された事実が確認された場合には、6月3日零時から起算して2週間が満了する6月16日24時、つまり6月2日の翌々週の応当日(同一の曜日)までに、発行会社から承認するか否かの通知がなければ、譲受人におyる株式取得は承認されたものとみなされるので、6月17日以降は、譲渡制限株式を移転することができます。

投稿者: 片山法律会計事務所