2016年4月1日号(「公正な価格」を考える4号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕

1 価格と関係のある価値の概念
 「価格」は,実際の売り手と買い手の間で合意に至る(べき)ものであり,同一の目的物であっても,交渉する当事者によって異なって成立するので,売り手が誰か,買い手が誰かという視点を切り離して考えることはできません。そのため,価値には様々な概念と種類がありますが,「価格」と一定の関係を有する価値概念は,実際の売り手と買い手に即して算定する「売り手にとっての価値」と「買い手にとっての価値」にほかなりません。
 そのほかにも,コントロール・プレミアムや非流動性ディスカウントは,一定の評価法で算定した「価値」から「価格」に転換するときに介在させる価値概念として「価格」と関係を有しますが,この点は後に述べます。
2 モノの価格
 世の中で取引されるモノの「価格」は,「売り手にとっての価値」と「買い手にとっての価値」との間で,常に以下の図のような関係が成立します。モノの価格は,売主が考えている主観的な価値以上で,買主が考えている主観的な価値以下で成立するといえます。この関係式で,「価値」という用語の前に「主観的な」という修飾語を付したのは,人によって目的物のどこに価値を感じるかは様々であり,目的物以外の要素に価値を感じて取引することもあり得るからです。

 

価格と価値の関係

 

 

 

投稿者: 片山法律会計事務所