2017年1月1日号(「公正な価格」を考える31号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕

相互に特別な資本関係がない会社間の「公正な価格」
 このような観点から,前掲平成24年2月29日付け最高裁決定は,「一般に,相互に特別の資本関係がない会社において株式移転計画が作成された場合には,それぞれの会社において忠実義務を負う取締役が当該会社及びその株主の利益にかなう計画を作成することが期待できるだけでなく,株主は,株式移転完全子会社の株主としての自らの利益が株式移転によりどのように変化するかなどを考慮した上で,株式移転比率が公正であると判断した場合に株主総会において当該株式移転計画に賛成するといえるから,株式移転比率が公正なものであるか否かについては,原則として,上記の株主及び取締役の判断を尊重すべきである。
そうすると,相互に特別な資本関係がない会社間において,株主の判断の基礎となる情報が適切に開示された上で適法に株主総会で承認されるなど一般に公正と認められる手続により株式移転の効力が発生した場合には,当該株主総会における株主の合理的な判断が妨げられたと認めるに足りる特段の事情がない限り,当該株式移転における株式移転比率は公正なものとみるのが相当である。」と判示しています。
 ただし,このようにいえるのは,判示からも明らかなとおり,「相互に特別な資本関係がない会社間において」,すなわち,対象会社と買収会社との間に実質的な支配従属の関係がなく,双方が独立の経済主体として交渉・意思決定をしていること(“独立当事者間価格”であること)が前提となります。

投稿者: 片山法律会計事務所