2017年4月1日号(「公正な価格」を考える40号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕

一般に公正と認められる手続を経ていない場合
 企業価値の増加が生じる場合,すなわち企業価値が増大する組織再編について,一般に公正と認められる手続を経ていない場合には,対象会社(被買収会社)と買収会社との間で実際に合意に至った組織再編対価(額・比率)を「公正な価格」とみることができません。このようなケースでは,対象会社(被買収会社)と買収会社との間で価格が成立し得る客観的な価値の範囲内で,増加価値(シナジー効果)を公正に配分する組織再編対価を決定するほかありません。
 ここにいう「価格が成立し得る客観的な価値の範囲」とは,“組織再編がない仮定での価値”(=増加価値をすべて買い手に配分する組織再編比率)以上,“組織再編がある前提での価値”(=増加価値をすべて売り手に配分する組織再編比率)以下にほかなりません。

 この価格の範囲内では,要するに,増加価値(シナジー効果)の配分の問題ですので,増加価値が対象会社(被買収会社)と買収会社のどちらの経営資源から生じているかという観点から,結局は,裁判所の裁量により「公正な価格」が決定されると考えられます。特に,特定の事業・経営資源から増加価値が生じたとみるべき特段の事情がない限り,互いの会社がその企業価値に応じて均等に貢献したものとみなすことは,裁判所の裁量の範囲内であると考えられます。

 

投稿者: 片山法律会計事務所