第3回

 今回は、譲渡等承認請求の手続について、発行会社の不承認の効果、承認機関と別段の定め、譲渡等承認請求の類型とその選択について解説します。

1 発行会社の不承認の効果

 譲渡制限株式とは、発行会社が譲渡による取得について発行会社の承認を要する旨の定款の定めが設けられている株式をいいます(会社法2条17号)。

 譲渡制限株式の移転については、発行会社の承認手続を経ていない場合、当事者間では効力が生じますが、発行会社との関係においては効力を生じません。当事者間で効力を有する法律関係を第三者に主張するための要件を対抗要件といいますが、当事者間で効力を有する譲渡制限株式の移転について、発行会社の承認手続は、第三者(発行会社)に主張するための対抗要件ではなく、発行会社との関係における効力発生要件になります。

 譲渡制限株式制度の趣旨は、専ら発行会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、譲渡人以外の株主の利益を保護することにあります。そのため、株主全員が同意した場合には、発行会社の承認手続は必要ありません。

 他方、発行会社の承認手続を経ずに譲渡制限株式を譲渡しても、発行会社との関係ではその譲渡は無効であり、発行会社は、代表取締役であっても、定款が定める承認機関(株主総会や株主総会で選任した取締役で構成される取締役会)の承認手続を経ずに譲受人を株主と認めることは許されず、依然として譲渡人(株主名簿に記載・記録されている株主)を株主として取り扱う義務があります。

 このように、譲渡制限株式を譲渡する当事者が発行会社の承認手続を経ることは、発行会社との関係で株式移転の効力を発生させるために不可欠な重要な手続になります。発行会社の承認手続は、対抗要件ではないため、発行会社の代表取締役が認めているからといって省略することができないことに注意してください。

2 承認機関と別段の定め

 譲渡制限株式の譲渡についての承認機関は、原則として、①取締役会設置会社においては取締役会、②それ以外は株主総会になります(会社法139条1項)。株主総会の承認決議は、普通決議(定足数:議決権の過半数(通常は定款で排除されている)、賛成数:出席株主の議決権の過半数)になります(同法309条1項)。

 ただし、定款で別段の定めをすることもできるとされています(会社法139条1項但書)。別段の定めには、以下のような例があります。

(1)承認機関の別段の定め

 取締役会設置会社が株主総会を承認機関と定める例や、支配株主である代表取締役を承認機関と定める例があります。

(2)承認決議の別段の定め

 株主総会における決議要件を加重し、特別決議(定足数:議決権の過半数、賛成数:出席株主の議決権の3分の2以上)にする例があります。 

(3)承認を要しない場合の定め

 発行会社の株主が株式を譲渡により取得する場合には承認をしたものとみなす旨を定める例があります。特例有限会社の定款には、譲渡による取得について発行会社の承認を要する旨と、発行会社の株主が株式を譲渡により取得する場合には承認をしたものとみなす旨の定めがあるとみなされます。これと異なる内容の定めを設ける定款変更をすることができません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律9条)。

 このように、譲渡制限株式を譲渡する場合には、発行会社が定款で別段の定めをしていないかどうかを確認する必要があります。株式の譲渡制限に関する定めは、登記事項であり(会社法911条3項7号)、会社の登記情報を取得することにより確認することができます。

3 譲渡等承認請求の類型

 譲渡等承認請求とは、発行会社に対し、譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定をすることの請求をいい、⑴譲渡人が請求する場合(会社法136条)と、⑵取得者が請求する場合(同法137条1項)に分けられます。

(1) 譲渡人が請求する場合(会社法136条)

 譲渡制限株式の譲渡は、発行会社の承認を得られないときは発行会社との関係で株式移転の効力が生じないので、譲受人は、通常、発行会社の承認後に譲渡人との間で株式譲渡契約を締結するか、または発行会社の承認を条件(停止条件)として株式移転の効力が発生し、もしくは発行会社の不承認を条件(解除条件)に株式移転の効力が消滅することを定めた株式譲渡契約を締結します。そのほか、発行会社の承認前に譲渡人・譲受人間で株式譲渡契約を締結し、発行会社の承認後、譲渡代金の支払を完了したときに株式移転の効力が生じることを定める場合もあります。

 このように当事者間で株式移転の効力の発生が確定する前は、譲渡人である株主が、会社法136条に基づき、発行会社に対し、譲受人による譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定をすることを請求します。下記⑵の場合と異なり、株主名簿に記載・記録されている株主(譲渡人)が単独で請求することができます。

 発行会社が不承認の決定をした場合には、当事者間で株式移転の効力が生じず、または消滅するので、譲渡人である株主が「譲渡等承認請求者」(会社法139条2項)に該当し、譲渡しようとした対象株式を保有していることになります。譲渡等承認請求に不承認の場合の株式買取請求が含まれる場合には、発行会社または指定買取人は、譲渡人である株主から譲渡制限株式を買い取ることになります。

(2) 取得者が請求する場合(会社法137条1項)

 他方、当事者間で株式移転の効力発生が既に確定した後は、株式取得者が、会社法137条1項に基づき、発行会社に対し、譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定をすることを請求します。このような請求は、競売や公売、譲渡担保権の実行、善意取得により株式を取得した場合に利用されます。株式取得者は、原則として、株主名簿に記載・記録されている譲渡人である株主と共同して請求しなければなりません(同条2項)。例外として、①株券を提示する場合(株券発行会社の場合)、②確定判決ないしそれと同一の効力を有する資料(裁判上の和解調書など)を提供する場合、③競売によって取得したことを証する資料を提供する場合などは、株式取得者が単独で請求することができます(会社法施行規則24条)。

 発行会社が不承認の決定をした場合でも、当事者間では既に株式移転の効力発生が確定しているので、株式取得者が「譲渡等承認請求者」(会社法139条2項)に該当し、取得した対象株式を保有しています。譲渡等承認請求に不承認の場合の株式買取請求が含まれる場合には、発行会社または指定買取人は、株式取得者から譲渡制限株式を買い取ることになります。

4 譲渡等承認請求の類型の選択

 以上のとおり、譲渡等承認請求にあたって、上記3⑴または⑵のいずれの方法をとるかによって、不承認の場合の株式買取請求における譲渡制限株式の売主が異なることになります。後に解説するとおり、株式の価格は、売主にとっての価値以上、買主にとっての価値以下で成立するという理論的枠組みがあり、売買価格決定申立事件では、株主に投下資本の回収手段を保障するという制度趣旨も加わるので、売主が譲渡人であるか譲受人(株式取得者)であるかは、株式価格の決定に影響を及ぼします。

 ただし、譲渡人である株主が株式譲渡契約を締結して譲渡制限株式を譲渡する通常の場合において、株式取得者(譲受人)が譲渡等承認請求をすることは、慎重に判断する必要があります。譲渡制限株式の譲渡は、発行会社の承認を得られないときは発行会社との関係で株式移転の効力が生じないので、発行会社が承認するか否かにかかわらず、株式を確定的に取得することは、通常の商取引では考え難く、発行会社の株主となること以外の目的がある場合が少なくありません。事業として個人株主から譲渡制限株式を譲り受け、譲渡等承認請求、売買価格決定申立てを行い、利益を稼得する業者もいます。弊事務所が取り扱った案件でも、依頼者である発行会社を代理した売買価格決定申立事件で、株式取得者が弁護士法72条に違反することを指摘し、依頼者の満足する解決に至ったケースもあります。

 このように、譲渡等承認請求の類型のいずれを選択するかによって、株式価格に及ぼす影響を検討しておく必要があります。

【Q&A】

1 あらかじめ譲渡制限株式を譲り受けることを発行会社の代表取締役に伝えると、株主名簿の名義を書き換えてくれました。取締役会や株主総会の承認はなかったのですが、発行会社に譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定を請求する必要がありますか?

 譲渡制限株式制度の趣旨は、専ら発行会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、譲渡人以外の株主の利益を保護することにあり、発行会社の承認手続は対抗要件ではなく、発行会社との関係における効力発生要件になります。

 この事例では、発行会社の代表取締役が株式の取得を承認しただけで、法定の承認機関(取締役会または株主総会)の承認を経ていないため、発行会社の株主全員が株式の取得に同意しない限り、発行会社との関係で株式移転の効力は生じません。発行会社の代表取締役を支配株主とする同族会社であるなどの事情により、発行会社の株主全員が同意すると見込まれる場合であっても、そのような株主構成は将来にわたって継続するとは限らず、後日、相続などにより株主構成が変わって紛争が発生し、株式移転の効力を争われたときに、発行会社の株主全員が同意した事実を立証できないおそれがあります。

 こうした場合には、発行会社に譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定を請求し、その意思表示が発行会社(の代表取締役)に到達したことを示す証拠を保存しておく必要があります。譲渡等承認請求が発行会社に到達した事実を立証することができれば、仮にその後に取締役会や株主総会の承認がなかったとしても、譲渡等承認請求の到達日から2週間の経過により承認されたものとみなされます(会社法145条1号)。 

2 非公開会社の株主から有償で譲渡制限株式を譲り受けることになりましたが、発行会社に譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定を請求する場合、譲渡人または譲受人(取得者)のいずれから請求すればよいですか?

 まず、現時点で、当事者間で株式移転の効力発生が確定したかどうかを確認します。株式譲渡契約を締結している場合には、契約書に株式移転の効力発生時期の定めがある場合が少なくありません。発行会社の承認を条件(停止条件)として株式移転の効力が発生する旨の定めがあれば、未だ株式移転の効力が生じていません。譲渡代金の支払を完了したときに株式移転の効力が生じる旨の定めがあれば、譲渡代金の支払前は、未だ株式移転の効力が生じません。発行会社の不承認を条件(解除条件)に株式移転の効力が消滅する旨の定めがある場合にも、未だ確定的に株式移転の効力が発生していないものとして取り扱います。

 未だ当事者間で株式移転の効力が確定的に発生していない場合は、譲渡人が単独で、発行会社に対し、譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定を請求します(会社法136条)。逆に、既に当事者間で株式移転の効力が確定的に発生している場合は、譲受人(取得者)が、原則として株主名簿に記載・記録されている譲渡人である株主と共同して、発行会社に対し、譲渡制限株式の取得を承認するか否かの決定を請求します(会社法137条)。

 もっとも、譲渡等承認請求を譲渡人からするか、譲受人からするかによって株式価格に影響を及ぼす場合があります。また、その後の売買価格決定申立事件における主張立証を考慮すると、譲受人(取得者)が譲渡等承認請求をすることは慎重に判断する必要があります。株式譲渡契約を締結する前に早めに当事務所にご相談ください。

投稿者: 片山法律会計事務所