第5回

 今回は、発行会社が株主または株式取得者から譲渡等承認請求を受けたときに履践しなければならない手続について解説します。

その手続は、おおまかに次の①~③に分けられますので、以下、順に説明します。

① 譲渡等承認請求の到達日やその内容を確認する(譲渡等承認請求の確認)

② 株式の譲渡または取得(以下「譲渡等」といいます。)を承認するか否かを決定する(承認・不承認の決定手続)

③ 決定内容を譲渡等承認請求者に通知する(決定内容の通知)

 なお、譲渡等承認請求に不承認の場合の株式の買取り請求が含まれる場合において、発行会社が譲渡等を承認せず、譲渡等承認請求者から株式を買い取るための手続(株式買取手続)については、次回に説明します。

1 譲渡等承認請求の確認

(1) 譲渡等承認請求の到達日の確認

 発行会社が株主または株式取得者から譲渡等承認請求を受けたときは、その意思表示が発行会社に到達した日を確認します。株式の譲渡等を承認するか否かの決定内容の通知(会社法139条2項)が、譲渡等承認請求の到達日から2週間(定款で短縮することができます。)以内に譲渡等承認請求者に到達しなかったときは、発行会社は譲渡等を承認したものとみなされます(会社法145条1項1号)。

 発行会社は、譲渡等承認請求の到達日を確認し、承認・不承認の決定手続のスケジュールを立てることが重要であり、とくに譲渡等を承認しない可能性がある場合には、決定内容の通知に要する日数を考慮し、2週間が経過する数日前には承認・不承認の決定手続を完了する必要があります。

 前回(第4回)に解説しましたが、譲渡等承認請求は、通常、内容証明郵便を利用して行うので、その書面を従業員等が受領した時に到達します。譲渡等承認請求の書面が普通郵便で郵便受けに投函された場合、レターパック等に表示された追跡番号から追跡サービスを利用して到達日時を確認できるときは、その証拠を保存しておくべきです。 

(2) 譲渡等承認請求者の確認

 譲渡等承認請求は、株主(譲渡人)が行う場合(会社法136条)と株式取得者(譲受人)が行う場合(会社法137条1項)があります。

 株主が譲渡等承認請求をしている場合には、その請求者が株主名簿に記載・記録された株主かどうかを確認します。

 株式取得者が譲渡等承認請求をする場合には、原則として、株主名簿に記載・記録された株主またはその相続人その他の一般承継人と共同して請求しなければならないので(会社法137条2項)、共同して請求する者(譲渡人)が株主名簿に記載・記録された株主かどうか(またはその一般承継人かどうか)を確認します。例外として、株券を提示する場合、確定判決ないしそれと同一の効力を有する資料を提供する場合、競売によって取得したことを証する資料を提供する場合など会社法施行規則24条各号のいずれかの要件を満たす場合には、株式取得者が単独で譲渡等承認請求をすることができるので、その要件を満たすかどうかを確認します。

 株主として譲渡等承認請求をする者または株式取得者と共同で譲渡等承認請求する者が株主名簿に記載・記録された株主でない場合には、発行会社の過失によって株主名簿の書き換えを失念したなどの場合でない限り、不適法な請求となります。株式取得者が会社法施行規則24条各号のいずれの要件も満たさずに単独で譲渡等承認請求をする場合も不適法な請求となります。不適法な請求に対する発行会社の対応については、QAで解説します。

(3) 譲渡等承認請求の内容の確認

 譲渡等承認請求は、譲渡制限株式の譲渡等を承認するか否かの決定を請求することのほか、次の事項を明らかにしなければなりませんので(会社法138条1号、2号)、それらの記載があるかどうかを確認します。

① 譲渡制限株式の数(種類発行会社の場合は種類と種類ごとの数)

② 譲受人または取得者の氏名又は名称

③ 不承認の場合に株式の買取りを請求する場合には、その旨

 発行会社は、①、②の記載がない場合には不適法な請求として取り扱います。③の記載がない場合には、株式の買取り請求がないものとして取り扱い、譲渡等を承認しない場合であっても、譲渡等承認請求者から株式を買い取るための手続は必要ありません。

2 承認・不承認の決定手続

 発行会社は、譲渡等承認請求の確認を完了した後、承認・不承認の決定手続に移行します。

 譲渡等承認請求に不承認の場合の株式の買取り請求が含まれる場合、承認・不承認の決定手続と株式買取手続は、スケジュールが密接に関連するので、株式買取手続についても併せて、まず、①定款に別段の定めがないかどうかを確認します。次に、②取締役会で、または③株主総会で、譲渡等を承認するか否かを決定しますので、以下、順に説明します。

(1) 定款の確認

 発行会社は、承認・不承認の決定手続および株式買取手続に関し、定款に別段の定め(会社法139条1項ただし書、140条5項ただし書、145条1号かっこ書、同2号かっこ書)がないかどうかを確認します。

① 承認機関と別段の定め(会社法139条1項ただし書)

 定款に別段の定めがない限り、譲渡制限株式の譲渡等を承認するか否かは、①取締役会設置会社では、取締役会で、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって決定します(会社法369条1項)。取締役会決議の定足数および賛成数は、定款で過半数を上回る割合を定める場合があります(同項かっこ書)。また、②取締役会非設置会社では、株主総会で、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(ただし、通常、定足数は定款で排除されています。)、出席した株主の議決権の過半数をもって決定します(同法309条1項)。

 そのほかの別段の定めは、前々回(第3回)に解説していますので、定款にそれらの別段の定めがないかどうかを確認します。

② 決定内容の通知期間の別段の定め(会社法145条1号かっこ書)

 発行会社は、譲渡制限株式の譲渡等を承認するか否かを決定したときは、その決定内容を譲渡等承認請求者に通知しなければならず(会社法139条2項)、譲渡等承認請求から2週間以内に決定内容を通知しなかったときは、譲渡等を承認したものとみなされます(同法145条1号)。

 ただし、定款で、この期間制限(2週間)を下回る期間を定めることができることとされているので(同号かっこ書)、定款にその別段の定めがないかどうかを確認します。

③ 買取人の指定の別段の定め(会社法140条5項ただし書)

 譲渡等承認請求に不承認の場合の株式買取り請求が含まれる場合において、発行会社が譲渡等を承認しない場合は、原則として発行会社が対象株式を買い取らなければなりませんが(会社法140条1項)、例外として、発行会社は、対象株式の全部または一部を買い取る買取人を指定することができることとされています(同条4項)。

 買取人を指定する場合、①取締役会設置会社では、取締役会決議で、②取締役会非設置会社では、株主総会の特別決議で買取人を指定します(同条5項、309条2項1号)。

 ただし、買取人の指定については、定款で、別段の定めを置くことができることとされているので(同法140条5項)、定款にその別段の定めがないかどうかを確認します。たとえば、買取人は代表取締役が指定する旨の定めを置く場合がありあます。

④ 発行会社による株式買取り通知期間の別段の定め(会社法145条2号かっこ書、同法施行規則26条1号かっこ書)

 譲渡等承認請求に不承認の場合の株式買取り請求が含まれる場合において、発行会社が譲渡等を承認しない場合は、株式買取り通知をしなければならず(会社法141条1項)、不承認の決定内容の通知から40日以内に譲渡等承認請求者に株式買取り通知(供託書の交付を含みます。)をしなかったときは、譲渡等を承認したものとみなされます(同法145条2号、同法施行規則26条1号)。

 ただし、定款で、この期間制限(40日)を下回る期間を定めることができることとされているので(会社法145条2号かっこ書、同法施行規則26条1号かっこ書)、定款にその別段の定めがないかどうかを確認します。

⑤ 指定買取人による株式買取り通知期間の別段の定め(会社法145条2号かっこ書、同法施行規則26条2号かっこ書)

 発行会社が買取人を指定する場合は、指定買取人が、不承認の決定内容の通知から10日以内に譲渡等承認請求者に株式買取り通知(供託書の交付を含みます。)をすれば、通知した対象株式については、譲渡等を承認したものとみなされることがありません(会社法145条2号かっこ書、同法施行規則26条2号かっこ書)。

 ただし、定款で、この期間制限(10日)を下回る期間を定めることができることとされているので(会社法145条2号かっこ書、同法施行規則26条2号かっこ書)、定款にその別段の定めがないかどうかを確認します。

(2) 承認機関が取締役会の場合

 承認機関が取締役会である場合、1週間前(定款で短縮されている場合にはその期限)までに取締役会の招集通知を発します(会社法368条1項)。決定内容の通知の期限が迫っている場合には、取締役全員(監査役設置会社の場合には監査役も含みます。)の同意を得て招集手続を省略し(同条2項)、または所定の要件・手続により取締役会の決議を省略すること(同法370条)が考えられます。

 取締役が譲渡制限株式の譲渡の当事者(譲渡人または譲受人・取得者)である場合、その取締役は、その決議に特別の利害関係を有するので、議決に加わることができません(同法369条2項)。

 取締役会では、定款に別段の定めがない限り、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって譲渡等を承認するか否かを決定します(同条1項)。

 譲渡等承認請求に不承認の場合の株式買取り請求が含まれる場合において、取締役会が譲渡等を承認しない場合は、発行会社が対象株式を買い取らなければならず(同法140条1項)、株主総会で株式買取り事項を決議する必要があります(同条2項)。そこで、多くの場合、取締役会で譲渡等を承認しない旨の決定をした後に併せて株主総会の招集決定をします(同法298条1項、4項)。ただし、買取人が対象株式の全部を買い取る場合には、通常、取締役会で譲渡等を承認しない旨の決定をした後に併せて買取人を指定する決定をします(同法140条5項本文)。

(3) 承認機関が株主総会の場合

 承認機関が株主総会である場合、代表取締役が(取締役が複数いる場合にはその過半数による決定に基づき)株主総会を招集します(会社法348条3項3号、298条1項)。代表取締役は、株主総会開催日の1週間前(定款で短縮されている場合にはその期限)までに、議決権を行使することができる株主に対して株主総会の招集通知を発しなければなりません(同法299条1項)。株主が少数である場合には、株主全員の同意を得て招集手続を省略し(同法300条)、または所定の要件・手続により株主総会の決議を省略すること(同法319条1項)も考えられます。

 株主総会では、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(ただし、通常、定足数は定款で排除されています。)、出席した株主の議決権の過半数をもって決定します(同法309条1項、普通決議)。

 譲渡制限株式の譲渡等の当事者(譲渡人または譲受人・取得者)である株主も議決権を行使することができます。ただし、その株主は、その決議に特別利害関係を有するので、その株主が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされた場合には、株主総会決議の取消事由になります(同法831条1項3号)。

 譲渡等承認請求に不承認の場合の株式買取り請求が含まれる場合において、株主総会が譲渡等を承認しない場合は、対象株式を買い取らなければならないため(同法140条1項)、通常、株主総会で譲渡等を承認しない旨の決定をした後に株式買取り事項または買取人の指定を決議します(同条2項、5項)。

3 決定内容の通知

 発行会社が譲渡制限株式の譲渡等を承認するか否かを決定したときは、その決定内容を譲渡等承認請求者に通知します(会社法139条2項)。代表取締役がこの通知を怠ったとき、または不正の通知をしたとき(たとえば、承認機関の決定がないにもかかわらず、決定内容を通知したとき)は、過料の制裁に処せられます(同法976条2号)。

 通知の方式に法令上の制限はありませんが、譲渡等を承認しない旨を通知する場合には、譲渡等承認請求の到達日から2週間以内に譲渡等承認請求者に決定内容を通知したことを立証できるように、配達証明付き内容証明郵便を利用することが適切です。ただし、一般書留である内容証明郵便は、昼間帯に宛先に配達を試みて、不在の場合には不在配達通知を差し入れ、郵便物自体は郵便局に持ち帰って保管するので、その後、譲渡等承認請求者が直ちに再配達を申し出るとは限らず、譲渡等承認請求者の支配管理領域に到達しないまま、譲渡等承認請求の到達日から2週間を経過し、譲渡等を承認したものとみなされる(1号みなし承認が成立する)おそれがあります。

 そこで、実務では、譲渡等承認請求の到達日から2週間以内に譲渡等承認請求者の住所にある郵便受けに投函されるように、内容証明郵便と同時に発送した旨の記載・記録のある同一内容の特定記録付き普通郵便も併せて同時発送しておくのが通例です。

 他方、発行会社が譲渡等を承認する旨を通知する場合には、1号みなし承認の成立を阻止する必要がありませんので、内容証明郵便・普通郵便を同時発送する必要はありません。

 なお、決定内容の通知と株式買取り通知を1通の書面で通知することも少なくありません。

 次回は、発行会社が譲渡等を承認せず、譲渡等承認請求者から株式を買い取るための手続(株式買取手続)について解説します。

【Q&A】

1 株式取得者(譲受人)の氏名・名称の記載がない不適法な譲渡等承認請求を受けました。どのように対処したらよいですか?

 不適法な譲渡等承認請求を受けた場合、発行会社はその不備を放置して手続を進めてはなりません。譲渡等承認請求を含め、適法な手続を履践していない譲渡制限株式の譲渡等の承認は、その効力を否定されるおそれがあります。発行会社の承認を得ない譲渡制限株式の譲渡があった場合、発行会社は、その後も譲渡人(元の株主)を株主として取り扱う義務を負います。仮に発行会社が株式取得者(譲受人)を株主として取り扱い、その議決権行使を認めて株主総会決議が成立した場合やその株主に剰余金の配当を行ったときは、株主総会決議や剰余金の配当の効力が否定されるおそれがあり、後日の紛争につながります。

したがって、発行会社としては、譲渡等承認請求者に補正や訂正を促し、それでも株式取得者(譲受人)の氏名・名称を明らかにしない場合には、譲渡等を承認せずに、買取りも行わないこととし、その後も譲渡人(元の株主)を株主として取り扱う必要があります。

2 当社は、株主(譲渡人)から譲渡制限株式の譲渡等承認請求を受け、譲渡等を承認しない旨の決定をし、その旨を配達証明付き内容証明郵便でその株主に通知したのですが、譲渡等承認請求から2週間が経過しようとする当日になっても、その株主が内容証明郵便を受け取っていません。どのように対応すればよいですか?

 譲渡制限株式の譲渡等を承認しない旨の通知は、その内容を立証するため、内容証明郵便を利用することが適切です。しかし、一般書留である内容証明郵便は、昼間帯に宛先に配達を試みて、不在の場合には不在配達通知を差し入れ、郵便物自体は郵便局に持ち帰って保管し、再配達の申出がないまま留置期間を経過したときは差出人に返戻することになります。譲渡等承認請求者は、発行会社を差出人とする不在配達通知を受けたときに、譲渡等承認請求の到達日から2週間以内に再配達を申し出るとは限らないため(むしろ、敢えて放置する可能性があります。)、譲渡等を承認したものとみなされる(1号みなし承認が成立する)おそれがあります。

 こうしたケースにおいて、宛先人が内容証明郵便の内容を推知することができ、受領の意思があれば容易に受領することができた場合には、遅くとも留置期間が満了した時点で宛先人に意思表示が到達したと認めた判例があります。しかし、留置期間の満了時にはすでに譲渡等承認請求の到達日から2週間を経過してしまう場合もあり、みなし承認を阻止する要件となる到達をこのような事例判断に委ねることは重大なリスクがあります。

 そこで、実務では、譲渡等承認請求の到達日から2週間以内に譲渡等承認請求者の住所にある郵便受けに投函されるように、内容証明郵便と同時に発送した旨の記載・記録のある同一内容の特定記録付き普通郵便も併せて同時発送しておくことが通例です。

 質問のケースでは、内容証明郵便だけを発送し、普通郵便を同時発送しなかったと考えられますので、このままでは、譲渡等承認請求の到達日から2週間の経過により譲渡等を承認したものとみなされるおそれがあります。こうした場合には、譲渡等承認請求者(またはその代理人)に対し、2週間が経過しようとする日の24時までに、①FAXし、送信履歴を保存する、②バイク便を利用して住所地の郵便受けに投函した記録を残す、③従業員等により直接交付し、または住所地の郵便受けに投函し、その日時の記録を残すなどの措置を講じるべきです。これらの措置を講じず、または奏功しなかった場合には、譲渡制限株式の譲受人・取得者が譲渡等のみなし承認(会社法145条1号)が成立したと主張し、株主の地位確認等の訴訟を提起するおそれがあります。

投稿者: 片山法律会計事務所