株券を発行する旨の定款の定めが登記されている株券発行会社でも、実際には株券を発行していない非公開会社は少なくありません。
① 実際には株券を発行していない場合には、譲渡等承認請求者は、株券を供託することができませんので、当社に対し、供託を行った旨の通知(会社法141条3項後段、142条3項後段)の代わりに、株券の交付を受けていない旨の通知をする場合もあります。
実際には当社が株券を発行していないことが事実であれば、暫定買取代金の供託事項証明書の交付から1週間が経過しても、当社に対象株式の売買契約の解除権が発生することはありません。
したがって、当社は、対象株式の売買契約を解除することなく、譲渡等承認請求者と株式の売買価格を協議し、協議が調わない場合には、買取通知から20日以内に裁判所に売買価格決定の申立てを行います(会社法144条1項、2項)。
② 実際に株券を発行していた場合には、暫定買取代金の供託事項証明書を交付してから1週間が経過したときに、当社に対象株式の売買契約の解除権が発生します(会社法141条4項、142条4項)。もっとも、対象株式の売買契約を解除した後でも、濫用にわたらない限り、譲渡等承認請求者が再び譲渡等承認請求を行うことは妨げられないので、解除後に再び譲渡等承認請求があった場合には、当社は譲渡等承認請求を受けたときの手続を繰り返すことになります。
当社は、譲渡等承認請求者による供託の失念、株券の発見や株券失効制度などの事由により、再び手続が繰り返される可能性やその時期(基準日が遅れると株式価格も変動します。)を予測しながら、解除権を行使するかどうかを決定します。
当社が解除権を行使しない場合には、株式価格が確定したとしても株券の交付がない限り株式移転の効力が生じないリスクを負うので、➊譲渡等承認請求者との間で株券の預託に関する合意をするかどうか(解除権を行使しない代わりに株券の預託を受けるなど)、➋譲渡等承認請求者に対し、株券の引渡し請求を行うかどうか、➌譲渡等承認請求者が当該株券を第三者に移転できないようにするため、株券の占有移転禁止の仮処分(執行官が株券の占有を取得し、保管する方法)を行うかどうかを検討します。