『会社法務A2Z』2017年3月号

 新連載 IFRS適用で変わる契約書

第1回 収益認識の原則と適用の手順について 

契約に基づく収益認識の原則と適用の手順(ステップ)を概説し,各契約類型に共通の前提となる「ステップ①契約の識別」を解説します。

A2Z 2017 03

  国際会計基準審議会(IASB)は,2014年5月,国際財務報告基準第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「本基準」とう)を公表しましたが,その後,2016年4月に「IFRS第15号の明確化」を公表し,本基準の発効日を2018年1月1日としています。他方,我が国では,これまで,企業会計原則の損益計算書原則に,売上高について実現主義の原則を定めるだけで,収益認識に関する体系的な会計基準は存在しませんでした。そこで,企業会計基準委員会(ASBJ)は,2015年3月から,本基準のコンバージェンス(日本基準化)のため,「収益認識に関する包括的な会計基準」の検討に着手し,2018年(平成30年)1月1日以降開始する事業年度から新基準の適用開始を当面の目標として開発を進めています。この新基準は,会社法431条が定める「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に含まれ,連結・個別を問わず,会社法の計算書類・連結計算書類に適用されますので,上場企業だけでなく,非上場企業を含む日本国内の株式会社が,この新基準の適用開始に向けて顧客との契約を見直し,企業内の体制を整備するという課題に直面しています。

 本基準は,多種多様な業界や事業に汎用的に適用される理論的・抽象的な内容となっていますが,企業の財務・法務担当者は,これを実際の契約書に適用し,また,適用結果を予期しながら契約条項を作成しなければなりません。本連載は,具体的な契約条項を例にとって新基準が契約書作成の実務にもたらす影響を解説することを目的としておりますが,今回(第1回)は,その前提となる本基準の基本的な事項を概説します。

 

 

 

投稿者: 片山法律会計事務所