すぐわかる契約・税務のポイント
著 者:弁護士・公認会計士 片山智裕
発行所:第一法規

 

ケーススタディ

 

 我が国の企業会計基準委員会が平成30年(2018年)3月30日に公表した企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」は,令和3年(2021年)4月1日以後開始する事業年度から適用が開始されます。

 新基準は,企業の業績(収益力)を表す損益計算書の最上行(トップライン)に掲げられる“売上高”に関する我が国初となる体系的な会計基準であるとともに,“契約”という法律概念を導入し,“契約に基づく収益認識の原則”を採用したことでも注目されています。

 この新基準は,国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards;略称IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」をコンバージェンス(日本基準化)したものであり,すべての業界・業種に汎用的に適用できるよう原理(考え方)を示すプリンシプル・ベースの抽象度の高い収益認識モデルとなっています。従来の実現主義では,一部の取引で,企業にとっての経済価値の流入すなわち“対価を受け取る権利”(資産)に着眼して収益を認識する会計処理も行われていましたが,IFRS第15号は,企業が顧客との間で締結した“契約”に焦点を当てることにより,企業が“財又はサービスを提供する義務”(履行義務)を充足すること(負債の消滅)によって収益を認識するという原理を貫徹しています。

 本書では,新基準(日本基準)の条項を体系的に解説するだけでなく,その根本にある基本的な考え方も理解できるように,第1編第1章では,IFRS第15号の開発過程の議論を踏まえて新基準の基本原則を解説するとともに,新基準の理解を深める一助となるように,IFRS第15号や公開草案,ディスカッション・ペーパーの条項や「結論の根拠」まで幅広く引用しています。特に新基準の適用にあたって必要になる契約(法律)の基礎知識については,対応する会計基準の条項に沿って,民法(平成29年法律第44号による改正後),商法,会社法等の条文を引用しながら解説を加えています。

 また,実務上,企業の会計処理が法人税・消費税と密接不可分であることから,基本原則(第1編),収益の単位(第2編),収益の金額(第3編)及び収益の時期(第4編)に分けて,会計基準と法人税・消費税を対比しながらその違いを解説し,収益認識に関する法人税法・消費税法の条文,基本通達を逐条式で解説しています。

 このように,本書は,会計基準である新基準を中心に,収益認識に関連する契約(法律),法人税法・消費税法を体系的にコンパクトにまとめています。企業の担当者の方々のみならず,専門家や学生の方々にも利用されることにより,新基準の実務処理と適切な理解に貢献できれば幸いです。

 

目次


序 編  収益認識に関する会計基準と税制改正

第1編  基本原則

 第1章 会計基準の開発

 第2章 会計基準の概要

 第3章 税制改正の概要

第2編  収益の単位

 第1章 会計基準

  第1節 顧客との契約を識別する

  第2節 契約における履行義務を識別する

 第2章 法人税

 第3章 消費税

第3編  収益の金額

 第1章 会計基準

  第1節 取引価格を算定する

  第2節 契約における履行義務に取引価格を配分する

 第2章 法人税

 第3章 消費税

第4編  収益の時期

 第1章 会計基準

  履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する

 第2章 法人税

 第3章 消費税 

 

 

投稿者: 片山法律会計事務所